ISBN:4104595012 単行本 石田 衣良 新潮社 2003/05/22 ¥1,470
書評/森 絵都
ともに十代を過ごした旧友と集まり、ああでもないこうでもないと言い合いながら痛飲するのは、私にとって定期的に必要な楽しみの一つだ。二十年近く友達をしていれば、良くも悪くもすっかり気心が知れているし、二十年分のネタがあるからまず間違いなく盛りあがる。皆が皆の過去を知り、恋愛を知り、傷を知り、下手をするとセックスの嗜好まで知っている。
が、それでいて私たちはもはや十代の頃のようには結びついていない。あの頃のように瞳に映るすべてを共有し、わかちあい、重なりあうことを求めてもいない。
単純な話、すべてをわかちあうには、私たちは個々の経験を積みすぎてしまった。恋。挫折。反発。和解。絶望。別離。誰もが味わうそれらを一通り経験し、すでに私たちは二巡目や三巡目に入っている。何もかもが新鮮だった一巡目の驚きや興奮、しびれるような感触。誰かに伝えたくて、わかってほしくて、わかりあいたくてしょうがなかったあの狂おしい衝動も、すべてを笑い話にする術に長けた今の私はいつしか忘れていた。
石田衣良氏の『4TEEN』を読んで、久々に思い起こした。一巡目の世界の初々しさと、生々しさと、痛々しさを。
書評/森 絵都
ともに十代を過ごした旧友と集まり、ああでもないこうでもないと言い合いながら痛飲するのは、私にとって定期的に必要な楽しみの一つだ。二十年近く友達をしていれば、良くも悪くもすっかり気心が知れているし、二十年分のネタがあるからまず間違いなく盛りあがる。皆が皆の過去を知り、恋愛を知り、傷を知り、下手をするとセックスの嗜好まで知っている。
が、それでいて私たちはもはや十代の頃のようには結びついていない。あの頃のように瞳に映るすべてを共有し、わかちあい、重なりあうことを求めてもいない。
単純な話、すべてをわかちあうには、私たちは個々の経験を積みすぎてしまった。恋。挫折。反発。和解。絶望。別離。誰もが味わうそれらを一通り経験し、すでに私たちは二巡目や三巡目に入っている。何もかもが新鮮だった一巡目の驚きや興奮、しびれるような感触。誰かに伝えたくて、わかってほしくて、わかりあいたくてしょうがなかったあの狂おしい衝動も、すべてを笑い話にする術に長けた今の私はいつしか忘れていた。
石田衣良氏の『4TEEN』を読んで、久々に思い起こした。一巡目の世界の初々しさと、生々しさと、痛々しさを。
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